2020/02/03 09:29
父の跡を継ぎ、仏壇漆塗り職人となり、漆そのものの魅力に惹かれ、仏壇と並行して独自の漆制作を開始しました。
伝統的な技法を踏まえつつ、条件は「漆を使う」の一点だけに絞り、常識などは意識の外に追いやり、僕だからこそ出来る漆の美しさの表現を目指してきました。
漆塗りで何が出来るか、どんな表現が出来るかを考え、多くのことを試しているうちに漆を「塗料」としてだけではなく「素材」として捉えるようになりました。
そして“漆以外の差材を使わず漆だけ”で、薄くて軽い器を制作。
華奢に見えるその器は、しなやかな強さを持っていて、それまで気づいていなかった「漆そのものの強さと優しさ」を感じました。
自分の傷を癒すという元々の性質が、採取された後もそこには宿っている。
その癒しの力こそが、漆の持つ強さと優しさの根源であり、人を優しい気持ちにさせるのだという思いに至りました。
異素材の欠片さえ包み込む、漆の優しさと強さの美しさを表現していきたいと考えています。
そんな思いから生まれたのが、ガラスの欠片を漆で包み込んだ器『包(つつむ)』です。
『包』は、ガラスの欠片を呼び継ぎした漆器と言った方がイメージしやすいでしょうか。
漆を“塗って”美しいものを作ることはもちろんなのですが、もっと広く素材として漆を見つめた制作を続けていきます。