2020/02/13 11:25
『包(つつむ)』
〜ガラス欠片を漆で呼び継ぎした器〜
「漆」というと、よく“堅牢”という表現が使われています。
9000年前の縄文時代の遺跡から漆が発掘されるほど、一度硬化したら分解されないことからもその一端が伺えます。
その“堅牢”という言葉は、どっしり、重厚、がっちり、といったイメージと結びつきやすい。
もちろん、僕もそういった漆も安心感があって大好きです。
ただ、漆だけで器(thin)を制作していた時にとても感じたのが、
「漆には、たとえ華奢に見えても、しなやかな強さがある」
そこにそれまで気付いていなかった漆の魅力を見つけました。
漆だけの飲み口だからこそ、唇が感じる漆が持つ優しさも。
そこからさらに一歩踏み出したものが『包』です。
漆だけで形成した薄い飲み口は、どこか危なげ。
初めて使う時は、そこに緊張が漂うかもしれません。
ただ、だからこそ、そこに器との対話が生まれ、器との新しい時間が流れ始めるのではないかなと思っています。
そんなふうに『包』を楽しんでもらえたら嬉しいです。
もちろん、普段使いとしての強度は持たせてありますので、緊張感漂うのは初めの頃だけだと思いますが、その後、なにを感じてもらえるか、そんなことも妄想しながらの制作です。